
物語のページをめくるたびに、「世界の見え方」が少しだけねじれて戻ってくる——。
道尾秀介の小説には、そんな奇妙でクセになる“後味”があります。
優しいはずの日常に、ふと差し込む不穏な影。
笑い合う友人関係の裏側に潜む、言葉にできないざらつき。
そして、すべてを読み終えた瞬間に訪れる、「え、そういうことだったの?」という震えと、どうしようもない切なさ。
ミステリーでありながら、人間の弱さややさしさまで丸ごと抱きしめてくる――それが道尾秀介の世界です。
この記事では、そんな世界観を味わい尽くせるおすすめ小説15作を、新旧バランスよく厳選しました。
読者を容赦なく裏切る本格トリック、少年少女の心の痛みを描いた青春小説、じわじわ恐怖が染み込んでくるホラータッチの物語、そして最新作『I』のような“読者の読み方そのもの”を仕掛けに変えた実験作まで、道尾ワールドの多面体を一気に駆け抜けます。
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これから道尾秀介を読んでみたい“はじめまして”の人
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何作か読んだけれど、次にどれへ進めばいいか迷っている人
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とことん「だまされたい」のに、読後はちゃんと心を揺さぶられたい人
そんなあなたのための、“道尾秀介マップ”のような15冊です。
次の一冊が、現実の色合いまで少し変えてしまうかもしれません。
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道尾秀介のおすすめ小説厳選15選
I
読み手の「選択」そのものを物語の核にしてしまった、最新モードの道尾秀介。
ページのどこから入るか、どんな順番で読むかによって、同じ言葉がまったく違う意味を帯びていく――「物語を読む」という行為を、ここまで意識させられる小説はそう多くありません。
何度も読み返すうちに、「自分はこの世界をどう解釈したいのか?」と、こちらの価値観まで揺さぶられていきます。
こんな人におすすめ
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小説そのものの“ルール”を壊すような実験作が好きな人
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読み返すたびに新しい発見がある本を探している人
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最新の道尾秀介を入り口に、その世界へ飛び込みたい人
ホームレスの野宮と知り合った田釜は、元刑事だという野宮が語る幾つかの話に耳を傾ける。田釜も、野宮も、何かを抱えていた。(「ゲオスミン」)
硝子職人の律子と暮らす高校生の夕歌は、世間を騒がせた一家殺害事件の生き残りだった。彼女には誰にも言えない秘密があり……。(「ペトリコール」)「本作は二つの章から成る物語です。読む順番は自由ですが、その選択により、結末は大きく変わります。どちらかの順番で読むと、二人の主人公を含め、多くの人が命を失います。別の順番で読むと、彼ら(彼女たち)は生き残ります。殺すか、救うか。あなたの選択が、人の生死を決定します。後戻りはできません。/著者より」
・まず、帯に「殺すか、救うか」とありましたが、読了して思ったのは、それぞれの結果がどうであれ、この短い言葉では表すことのできない苦境や苦悩を登場人物たちは味わってきたんだなぁということ。 まあ、1章が160ページ位ずつありますので、当然、それぞれひとつの物語としても深い。
N
章の並べ方ひとつで、物語の印象ががらりと変わる「読者参加型」ミステリー。
ここで描かれるのは、事件そのものよりも、「情報をどんな順番で知るか」によって人間の感情や判断がどれほど左右されるか、という怖さです。
読み終えたあと、「もし別の順番で読んでいたら、自分は登場人物をどう見ていただろう?」と、何パターンもの“もう一つの読書体験”を想像してしまいます。
こんな人におすすめ
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パズル的な読み方ができる小説が好きな人
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視点や順序が変わることで、人間の印象が変わる感覚を味わいたい人
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『I』より一歩手前の“実験作入門”として楽しみたい人
「本書は6つの章で構成されていますが、読む順番は自由です。
はじめに、それぞれの章の冒頭部分だけが書かれています。読みたいと思った章を選び、そのページに移動してください。
物語のかたちは、6×5×4×3×2×1=720通り。読者の皆様に、自分だけの物語を体験していただければ幸いです。/著者より」
未知の読書体験を約束する、前代未聞の一冊! この物語をつくるのは、あなたです。
・気になる章から読み始め、2つ目3つ目と進んでいくうちに、あぁ~こうなるのね! と繋がりが楽しめる一冊でした。 今は友人に勧めて、私は違う作品を読んで道尾ワールドを楽しんでいます。 是非、皆さんに読んで欲しい一冊です。
向日葵の咲かない夏
子どもの目線で描かれるのに、読者の心を刺すのは大人向け――そんな“毒”を持った一冊。
夏休みの始まりという、いちばん無邪気であるはずの時間に、世界の輪郭が少しずつ濁っていく感覚が読者の中にも染み込んできます。
真相そのものより、「最後まで付き合ってしまった自分の心の在りよう」にゾッとさせられる、“読後にこそ怖くなる物語”です。
こんな人におすすめ
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子どもが主人公のダークな物語に惹かれる人
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読み終えたあと、しばらく世界が灰色に見えてほしい人
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「ミステリーでここまでやっていいの?」と限界に触れてみたい人
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。
きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。
だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。
一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。
「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
・最強に面白かった、感想をネタバレにならないようにまとめたかったけど無理だったのでとりあえず迷ったら読んでください
シャドウ
「成長」と「喪失」が、じわじわと絡み合っていく成長ミステリー。
日常の小さな違和感が積み重なって、ある瞬間、一気に“別の絵”として立ち上がる構図の見事さは、道尾作品の中でもかなりエグい部類です。
ただ怖いだけでなく、「親子とは何か」「子どもにとって大人とは何者か」といった問いが、読者の胸にも静かに残ります。
こんな人におすすめ
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家族をテーマにした心理ミステリーが読みたい人
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ラストで世界の見え方がひっくり返る体験を求めている人
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初期の代表作から道尾ワールドをたどってみたい人
人は、死んだらどうなるの?――いなくなるのよ――いなくなって、どうなるの?――いなくなって、それだけなの――。
その会話から三年後、凰介の母は病死した。
父と二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。
そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが……。
父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?
いま最も注目される俊英が放つ、巧緻に描かれた傑作。
・道尾秀介さんの作品はいろいろ読んでますが、今作のラストは本当に良かったです。 ミステリーを読んでいるつもりだったのに、感動させられてしまいました。 2回目読み返すと、伏線の張り方が丁寧で驚かされます。
龍神の雨
「祈り」と「呪い」の境目に立たされる人々を描いた、濃密な人間ドラマ系ミステリー。
田舎の風景や雨の匂い、風習の重さが、ページのすき間からむっと立ちのぼってくるような読書感覚があります。
誰かを守るために選んだ行動が、別の誰かを傷つけてしまう――その連鎖の残酷さが、読み終えたあともしつこく心に残ります。
こんな人におすすめ
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土地の雰囲気や風習が濃厚な小説が好きな人
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「正しさ」と「救い」が必ずしも一致しない物語に惹かれる人
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どっぷりと空気感に浸れる長編をじっくり味わいたい人
添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。
溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。
蓮は継父の殺害計画を立てた。
あの男は、妹を酷い目に遭わせたから。
――そして、死は訪れた。
降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか?
あなたの胸に永劫に刻まれるミステリ。
・とにかく面白いです。 向日葵と同じでその後は読者の想像に委ねられますが、向日葵と違って何とも言えないモヤモヤ感はありません。 伏線回収やミスリードが凄く、作者の掌の上で踊らされました。 心が温まるのか苦しくなるのか、その狭間を行く素晴らしい作品です。 また読みます!
光媒の花
ひとつの“光”をモチーフに、時間や人物がゆるやかにつながっていく連作短編集。
直接的な“事件”よりも、人生のある瞬間に差し込むまばゆさや、取り返しのつかない選択の重さが、静かな筆致で描かれます。
読み進めるうちに、バラバラの物語だと思っていたピースが少しずつつながり、「あ、ここで出会うのか」と胸が熱くなる構成が秀逸です。
こんな人におすすめ
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衝撃のどんでん返しより、静かな余韻を好む人
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人生の“岐路の瞬間”を描いた物語が好きな人
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道尾の「うまさ」と「優しさ」の両方を味わいたい人
一匹の白い蝶がそっと見守るのは、光と影に満ちた人間の世界――。
認知症の母とひっそり暮らす男の、遠い夏の秘密。幼い兄弟が、小さな手で犯した闇夜の罪。心通わせた少女のため、少年が口にした淡い約束……。
心の奥に押し込めた、冷たい哀しみの風景を、やがて暖かな光が包み込んでいく。
すべてが繋がり合うような、儚くも美しい世界を描いた全6章の連作群像劇。
・美しいです。とても。 登場人物やその周りで起きていることはとても日常でむしろ下層の人たちと言っても良いかもしれない環境だぅてりしますが、 読んでいる間ずっと、作られたような人工的な美しさではない ギラギラしたものでない、澄んだ美しさを感じていました。 いい小説です。作者の力量にも感服いたします。
月と蟹
「子どもだからこそ書ける残酷さ」と「子どもだからこそ信じたい物語」を、これでもかと突きつけてくる一冊。
海辺の町の湿った空気の中で、子どもたちの願いや妄想がだんだん現実を侵食していく、その過程を見守るのがつらくも魅力的です。
読者は、どこまでを「遊び」と呼んでよかったのか、何度も自分に問いかけながらページを戻りたくなります。
こんな人におすすめ
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直木賞受賞作で道尾ワールドの核心に触れたい人
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子どもの視点から描かれる理不尽さに耐える覚悟がある人
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読後しばらく静かなダメージを抱えたい人
「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」──
家にも学校にも居場所が見つけられない小学生の慎一と春也は、ヤドカリを神様に見立てた願い事遊びを考え出す。
100円欲しい、いじめっ子をこらしめるなどの他愛ない儀式は、いつしかより切実な願いへと変わり、子供たちのやり場のない「祈り」が周囲の大人に、そして彼ら自身に暗い刃を向ける……。
鎌倉の風や潮のにおいまで感じさせる瑞々しい筆致で描かれ、少年たちのひと夏が切なく胸に迫る長篇小説。
・登場人物の心理描写が素晴らしい。ここまで描くかってくらい丁寧に書かれています。 そして、至る所に慎一君の「少年らしさ」が上手く表現されています。 少年ならでは、と言ってもいいですね。 とにかく読んでいて慎一君の次の行動が気になってしょうがない。 私はページを捲る手が止まりませんでした。 おすすめの作品です。
カラスの親指 by rule of CROW’s thumb
負け続きの人生を歩んできた大人たちが、“最後の一手”に賭ける物語。
詐欺師たちの軽妙なやりとりに笑いながら読んでいるうちに、いつのまにか彼らの背負ってきた重さに胸が締めつけられていきます。
ラスト近くで物語の意味がガラリと反転し、タイトルの「親指」がまったく別の感情を連れてくる、その瞬間がたまりません。
こんな人におすすめ
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人情味あふれるクライム系ミステリーが好きな人
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“悪人になりきれない詐欺師たち”という設定に弱い人
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読後にちょっと泣いて、でも前向きな気持ちになりたい人
人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。
「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。
各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは?
息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。道尾秀介の真骨頂がここに!
最初の直木賞ノミネート作品、第62回日本推理作家協会賞受賞作品。
・とても、とても面白かったです。人生で一番と言える作品です。 向日葵の咲かない夏、シャドウの読後に読み始めました。1/3ほど読み進めたところで変わり映えがなく、なぜこんなに評価が高いのかと改めてレビューを見にきました。「後半から手が止まらなくなった」という感想を見つけ、読み進め、読了できて本当に良かったと、あそこで積んでしまわなくて良かったと心から思っています。
透明カメレオン
「人に合わせる」ことを極端に突き詰めた先に待っているものを描く、現代社会のホラーともいえる一冊。
空気を読みすぎるがゆえに、自分という輪郭がどんどん薄れていく恐怖が、じわじわと皮膚の下に入り込んできます。
笑える場面も多いのに、読み終わるころには「自分もどこかで同じことをしていないか」と、背中がそっと冷たくなるはず。
こんな人におすすめ
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コミカルさと不気味さが混じった物語が好きな人
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職場や学校の「同調圧力」にモヤモヤしている人
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じわじわ系の社会派ミステリーで胃をキリキリさせたい人
ラジオパーソナリティの恭太郎は、素敵な声と冴えない容姿の持ち主。
バー「if」に集まる仲間たちの話を面白おかしくつくり変え、リスナーに届けていた。大雨の夜、びしょ濡れの美女がバーに迷い込み、彼らは「ある殺害計画」を手伝わされることに。
意図不明の指示に振り回され、一緒の時間を過ごすうち、恭太郎は彼女に心惹かれていく。
「僕はこの人が大好きなのだ」。秘められた想いが胸を打つ、感涙必至のエンタメ小説。
・こんなに感動するとは思わなかった。 よくこんな話を思いつけるなあ。 ジェットコースターのような展開で、ページをめくる手が止められませんでした。 個々のキャラクターが生き生きとしており、このまま別れたくないような余韻を感じさせてくれます。 自分は「カラスの親指」よりもこっちの方が好きだなあ。あちらも名作ですけど。 ブラボー!!
いけない
章の合間に差し込まれる写真によって、「さっきまでの理解が一瞬で崩れる」快感と恐怖を味わえる仕掛け小説。
語られた物語と、そこに添えられた一枚の写真。その“ズレ”に気づいた瞬間、自分がどれだけ都合よく世界を解釈していたかに戦慄します。
読者の視線そのものをトリックに組み込んだ、きわめてメタなエンタメです。
こんな人におすすめ
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写真やビジュアルを使ったミステリーに興味がある人
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短編ごとに「やられた…」と言いたくなる作品が読みたい人
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「事実」と「解釈」の違いにゾクッとしたい人
“写真”が暴くもうひとつの真相。あなたは見抜けるか
各章の最終ページに登場する一枚の写真。その意味が解った瞬間、読んでいた物語は一変する――。二度読み必至の驚愕ミステリ。
・お得意の叙述トリック、矛盾やこじつけのように「?」となるところが一点もない。複雑に絡まりまくった人、モノ、時間だけど、最後にスッキリ解ける。 イヤミスと言う人が多いのも納得なんですが、動機もトリックもすべて納得できてしまうので、そこも含めてにじゅうまる!
いけないⅡ
前作のコンセプトを引き継ぎながら、「読者の想像力」をさらに試してくる続編。
写真から読み取れる情報が増えたぶん、「どこまでを信用していいのか」という不安も倍増し、読み手の推理癖が徹底的に刺激されます。
一度目は直感で、二度目は論理で――そんなふうに読み方を変えると、まったく別の物語に見えてくるはずです。
こんな人におすすめ
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『いけない』で写真トリックの虜になった人
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前作よりさらに“難度高め”の読書ゲームに挑戦したい人
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連作短編集の構成の妙を味わいたい人
【本書の楽しみ方】
1 まずは各章の物語をお楽しみください。
2 各章の最終ページには、ある写真が挿入されています。
3 写真をみることで、それぞれの“隠された真相”を
発見していただければ幸いです。前作をはるかに凌ぐ“どんでん返し”と“伏線回収”。
「写真」の真相を見抜いたとき物語は一変する。
前作は累計40万部突破!
道尾秀介が仕掛ける体験型エンタメの金字塔、再び。
・傑作!完成度の高い4つの短編。 それぞれが独立した物語でありながら、見事にリンクもしている。 本に印刷されたQRコードを読み込むと、各短編の解説とヒントが読める。 面白くて1日で読み終えた。
背の眼
“視線”と“写真”が生む恐怖を、これでもかと増幅させたホラー寄りサスペンス。
山村の閉ざされた空気、消えた子どもたちの気配、写真に写り込んだ「何か」――どれも直接的な描写は少ないのに、ページをめくる手が汗ばむような圧迫感があります。
オカルトとロジックの境界線を綱渡りする感覚がクセになる一作です。
こんな人におすすめ
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心霊要素のあるミステリーを求めている人
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じわじわと追い詰められるような読書体験が好きな人
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真備シリーズの出発点からきちんと追いかけたい人
ホラー作家の道尾は、子供が次々消える“神隠し”の村で、霊のものとしか思えぬ声を聞く。
逃げ帰り向かったのは「霊現象探求所」。話を聞いた所長の真備庄介は、「背の眼」と書かれたファイルを差し出す。
そこには、人の眼が写り込んだ4枚の心霊写真と、その送り主からの手紙が。
写真の全てが村の近辺で撮影されており、しかも被写体全員が撮影後に自殺していた……。
この村は一体!?道尾秀介デビュー作。
・凄く面白かった。読んでいてドンドン引き込まれました。 犯人が予想もしていない人だったのでビックリ! あと、ドラマがYou Tube動画にあがっていたので、そちらも見ました。 本もドラマも両方良かったです。
カササギたちの四季
街角のリサイクルショップを舞台に、「モノ」にまつわる小さな謎と人間ドラマが連鎖していく連作短編集。
誰かが手放した品物の背景には、必ず理由や感情がある――その“見えない部分”をめぐる推理が、軽妙な会話とユーモアで描かれます。
読後には、部屋の片隅に転がっているガラクタでさえ、少し愛おしく見えてくるはず。
こんな人におすすめ
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日常の中のささやかな「なぜ?」を楽しみたい人
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シリアス一辺倒ではない、温度高めのミステリーを読みたい人
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連作短編でキャラクターの関係性が深まっていくのが好きな人
リサイクルショップ・カササギは今日も賑やかだ。
理屈屋の店長・華沙々木と、いつも売れない品物ばかり引き取ってくる日暮、店に入り浸る中学生の菜美。
そんな三人の前で、四季を彩る4つの事件が起こる。
「僕が事件を解決しよう」華沙々木が『マーフィーの法則』を片手に探偵役に乗り出すと、いつも話がこんがらがるのだ……。
心がほっと温まる連作ミステリー。
・なんて愛おしい人物たち、愛おしい世界観、文章! 昭和のホームドラマ+ちょっとマヌケで愛らしいホームズ&コロンボという感じ。著者はこのところ、ナイフを研いで研いで研ぎ澄ましたような文章表現を追及していた印象だけれど、今度は一転して文章そのものもユーモラスで、温度がある。
ソロモンの犬
「信頼」と「裏切り」が、おそろしいまでに近い場所にあることを思い知らされる青春ミステリー。
学生生活のもろさや、恋愛感情のねじれた力学が、ある出来事をきっかけに一気に黒い影を帯びていきます。
友情・恋・将来――どれもきれいごとでは済まない現実の重さが、ラストまで読者の胸を掴んで離しません。
こんな人におすすめ
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大学生くらいの年代を描いたミステリーが読みたい人
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「信じたい人ほど疑わしく見える」という感覚にぞわっとする人
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スピーディーさより心理の綾をじっくり味わいたい人
大学生・秋内の目の前で、幼い友人・陽介はトラックに轢かれた。
いきなり走り出した愛犬のリードに引きずられての、無惨な事故。
陽介は助教授のひとり息子だった。
あの時、犬はなぜいきなり走り出したのだろう?
居合わせた同級生たちは関係があるのか…現場で感じた違和感が忘れられない秋内は、動物生態学に詳しい間宮先生に相談して、自分なりの捜査をはじめる。
そして予測不可能の結末が…!
青春の滑稽さ、悲しみを鮮やかに切り取った、俊英の傑作ミステリー。
・題名に惹かれ読みはじめたのですが、いやはや、気持ちよい位に作者に踊らされました。 ラストへ向けての疾走感も、笑ってしまう位のどんでん返しも、久々に満足!といった感じです。 紙のように薄っぺらいと書かれてる方もおられるようですが、是非もう一度読み返して頂きたい。 きっと作者の張り巡らせた伏線に気付かれるはず。 おすすめです!
スケルトン・キー
“恐怖を感じない”青年を主人公に据えたことで、人間の倫理観や感情の輪郭を逆照射してくるダークミステリー。
彼の冷静すぎる視線を通して世界を見るうちに、「怖がること」「痛むこと」が、どれほど人間らしさを支えているのかが浮かび上がってきます。
道尾作品らしい仕掛けと、読後に残るヒリヒリした感覚の両方を味わえる一冊です。
こんな人におすすめ
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ダークヒーロー的な主人公が登場する物語に惹かれる人
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人間の“感情の欠落”をテーマにしたサスペンスが読みたい人
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読み終えてからもう一度最初に戻りたくなる構成が好きな人
19歳の坂木錠也(さかき じょうや)は、ある雑誌の追跡潜入調査を手伝っている。
危険な仕事ばかりだが、生まれつき恐怖という感情が欠如した錠也にとっては天職のようなものだ。
天涯孤独の身の上で、顔も知らぬ母から託されたのは、謎めいた銅製のキーただ1つ。
ある日、児童養護施設時代の友達が錠也の出生の秘密を彼に教える。
それは衝動的な殺人の連鎖を引き起こして……。
二度読み必至のノンストップ・ミステリ!
・ミステリーとしての謎解き的なオチに、驚きはないかもしれません。 でも、きっと「やられた!」と思う瞬間があります。私は余裕で一本とられました。 そのやられた瞬間に気付いた時の驚きと悔しさはなかなかのものだと思いますし、結果的には普通だろうと思っていたオチも「そういうことか!」と膝を打つこと必至かと。 スピード感がある文章は読みやすかったですし、かなり楽しめたミステリーでした。
よくある質問(Q&A)
Q. 道尾秀介は、どの作品から読むのがおすすめですか?
A. 「まず“道尾っぽさ”を味わいたいなら」
-
『向日葵の咲かない夏』
-
『シャドウ』
-
『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』
あたりが鉄板です。
不穏な空気・重たいテーマ・鮮やかなどんでん返しまで、道尾作品の濃いところを一気に体験できます。
「いきなり重いのはちょっと…」という人は、
-
『光媒の花』
-
『カササギたちの四季』
など、連作短編集から入ると“道尾ワールドの空気感”にじわっと慣れていけます。
Q. ホラーやグロい描写が苦手でも読めますか?
A. 作品によりますが、選び方を工夫すれば十分楽しめます。
-
怖さ控えめ・読後感やさしめ
→ 『光媒の花』『カササギたちの四季』『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』
-
じわじわ怖い・ダーク寄り
→ 『向日葵の咲かない夏』『背の眼』『龍神の雨』
というイメージです。
「とことんゾクッとしたい人」はあえて怖めラインへ、
「まずはストーリー重視で楽しみたい人」はやさしめラインから入るのがおすすめです。
Q. 実験作の『I』『N』は、最初の一冊にしても大丈夫?
A. 「あり」です。ただし、少し“変則ルールの小説”です。
-
「普通の小説の読み方」にあまりこだわりがない
-
パズル的な構成や“読書ゲーム”が好き
というタイプなら、最初から『I』『N』に飛び込んでも楽しめます。
一方で、
「まずはストレートな物語で作家のカラーを知りたい」という人は、
-
『向日葵の咲かない夏』
-
『シャドウ』
-
『龍神の雨』
などを先に読んでから、『I』『N』で“道尾の実験モード”に進むと、振れ幅の大きさをより楽しめるはずです。
Q. 中高生でも読めますか? 難しくないですか?
A. 文章は読みやすく、会話も多いので、中高生でも十分読めるレベルです。
ただし、作品によっては「えぐいテーマ」や「後味が重い結末」もあります。
-
中高生にもすすめやすい
→ 『光媒の花』『カササギたちの四季』『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』
-
読む年齢を少し選ぶかも
→ 『向日葵の咲かない夏』『月と蟹』『スケルトン・キー』
といったイメージで選んであげると安心です。
大人が読んでも刺さる作品ばかりなので、“親子で同じ本を読む”のも楽しめる作家です。
Q. ネタバレにならない“読む順番”はありますか?
A. このブログで紹介している15冊は、基本的にどれも単体完結なので、好きな一冊から読んで問題ありません。
意識したいのはこのくらいです。
-
真備シリーズ(『背の眼』など)
→ シリーズとして追いたい人は刊行順がベター
-
『I』『N』『いけない』『いけないⅡ』
→ 「仕掛け系」がハマるかどうか知りたいなら、いきなり読んでもOK
シリーズ色が強い作品は少なめなので、
「今日の気分」を基準に、興味を引かれたタイトルから飛び込んでしまって大丈夫です。
まとめ:どこから読んでも、“世界の見え方”が少しズレて戻ってくる
道尾秀介の小説は、
-
優しい日常に紛れ込んだ、言葉にできない違和感
-
読み進めるほどじわじわ浮かび上がる、人の弱さとやさしさ
-
ラスト数ページで世界が反転したあとに残る、どうしようもない切なさ
が、何層にも折り重なった“感情ジェットコースター”のような読書体験をくれます。
今回紹介した15冊も、
-
読者を容赦なく裏切る本格トリック
-
子どもたちの痛みと祈りを描いた青春小説
-
土地の風習や雨の匂いまで染み込んだ人間ドラマ
-
読者の読み方そのものを仕掛けに変えた実験的な物語
……と、ジャンルもトーンもバラバラです。
それでも、ページを閉じたときにふっと立ち上がるのは、どの作品にも共通するあの感覚――
「世界はやっぱり少し怖い。でも、それでも誰かを信じたくなる」という、妙にリアルな後味です。
今日は思い切り震えたいから『向日葵の咲かない夏』にするか、
静かな余韻に浸りたいから『光媒の花』にするか、
人生の負け組たちの逆転劇に胸を熱くしたいから『カラスの親指』にするか――。
その日の気分で、一冊選んでみてください。
読み終えたころには、きっとあなたの中の「世界の見え方」が、ほんの少しだけねじれて、でも前より愛おしくなっているはずです。
そしてもし、「これは刺さった」と思える一冊に出会えたなら、
そこから先は、遠慮なく道尾ワールドの沼に浸かっていきましょう。
この15冊は、そのための“最高の入口セット”です。
※セール・商品情報などは変更になる場合がありますので必ずご確認の上ご利用ください。
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最後までお読みいただきありがとうございます。
良い本と、良い出会いを。











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