
歴史の教科書ではほとんど触れられない“名もなき人たち”に、これほどまでに光を当ててくれる作家がいるだろうか――。
戦国の石工、敗者と呼ばれた武将たち、江戸の火消しや裏稼業のプロたち、そして現代を生きる高校生まで。
どんな時代・どんな立場の人物でも、その心の揺れや誇りをまっすぐ描ききるのが、今村翔吾という作家です。
派手な英雄譚よりも、歴史の“すき間”に埋もれた人々のドラマ。
正解のない時代に、それでも必死で生き抜こうとした人間の姿。
ページを閉じたあと、「歴史ってこんなに“自分ごと”として感じられるものだったんだ」と、思わず世界の見え方が変わってしまう──そんな読書体験が、今村作品には詰まっています。
この記事では、
口コミや売上、話題性をもとに、新旧バランスよく15作品を厳選。
直木賞作から“敗者視点”の歴史小説、江戸エンタメシリーズ、青春小説まで、今村翔吾の世界観が一気に伝わるラインナップをまとめました。
• 歴史小説は久しぶり
• どの作品から入ればいいか迷っている
• とにかく「人間ドラマ」が濃い物語を読みたい
そんな方のために、ネタバレは避けつつ、「どんな世界が描かれているか」「どんな気分のときに刺さる一冊か」を中心に紹介していきます。
あなたの本棚に、長く付き合える“推しの一冊”が増えますように。
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間違いない今村翔悟の名作15選
塞王の楯
1580年代の近江を舞台に、砲術を誇りとする国友衆と、石垣造りの名手である穴太衆という職人集団が、城をめぐって矛(大砲)と楯(石垣)の技と意地をぶつけ合います。直木賞を受賞した本作は、人の命を守るための武器づくりとそれを破る技術がせめぎ合う場面に加え、武将・立花宗茂と京極高次の対比を通して“戦う”ことの意味も問いかけます。歴史に詳しくなくても職人たちの仕事ぶりと人間ドラマに胸が熱くなる作品です。
こんな人におすすめ
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名も無い職人が主人公の歴史ドラマに興味がある人
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技術のぶつかり合いだけでなく、人間の信念や矜持を描いた小説を読みたい人
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直木賞作品から今村翔吾の世界を体験したい人
時は戦国。炎に包まれた一乗谷で、幼き匡介は家族を喪い、運命の師と出逢う。石垣職人“穴太衆”の頂点に君臨する塞王・飛田源斎。彼のように鉄壁の石垣を造れたら、いつか世の戦は途絶える。
匡介はそう信じて、石工として腕を磨く。一方、鉄砲職人“国友衆”の若き鬼才・国友彦九郎は、誰もが恐れる脅威の鉄砲で戦なき世を目指す。
相反する二つの信念の持ち主同士に対決の時が迫る!
「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、究極のエンタメ戦国小説!! 第166回直木賞受賞作品
・刀鍛冶や城作りの大工を主人公にした小説も数は少ないのですがあります。 しかし、城の石垣を作る石工を主人公にした小説は本作品だけではないでしょうか。 戦国時代中期以降に平城が作られるようになると、城作りに欠かせなくなる石工ですが、歴史学者が研究することもなく、歴史の教科書にも載らない職業です。 歴史に埋もれた人に光を当てて読者に紹介することは、歴史小説家の醍醐味なのでしょう。 作者の下調べは実に緻密に行われており、石工の仕事がよく分かります。
八本目の槍
賤ヶ岳の七本槍として知られる武将たちに“八本目”として石田三成を加え、彼らの出世や葛藤を描いた異色作。信長亡き後の豊臣政権で出世街道を走る若者たちと、後に逆賊と呼ばれる三成の内面を、仲間たちの視点で再評価します。戦国の英雄譚と同時に、権力と友情の揺らぎを丁寧に描き出すため、読後には“三成像”が揺らぐでしょう。
こんな人におすすめ
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石田三成や豊臣政権に興味があり、人物像を多面的に知りたい人
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戦国の名場面を新しい視点で読みたい人
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同世代の仲間との友情や出世争いがテーマの物語が好きな人
安土桃山時代の見方が変わる! 誰も書かなかった三成が、ここにいる!
盟友「賤ケ岳七本槍」の眼を通して、浮かび上がる三成の真の姿とは。
過酷な運命を背負った七本槍たちの葛藤、三成との相克そして信頼が、巧みな構成のなかに描かれ、三成の言葉には、千年先を見通した新しき世への希望が滲む。
はたして、戦国随一の智謀の男は、何を考え何を思い描いていたのか。
凄まじき“理”と熱き“情”で、戦国の世に唯一無二の輝きを放った武将の姿を、史実の深い読みと大胆な想像力で描く傑作。
・とても面白かったです。時代小説の枠だけでなく、最近読んだ小説全般で一番でした。 これまで石田三成という人物を、徳川家康に挑んで負けた官僚型の武将、くらいにしか認識していませんでしたが、この作品で印象が大きく変わりました。 作中に出てくる三成の理想とする国や政の姿。 はたしてどこまでが史実・客観的主張だったのか?という点はさておき、中世の日本でここまで革新的・進歩的な思考を持った人物が一人くらいいたら、と想像するのは一歴史好きの身として非常に楽しいです。 一度読了したところですが、しばらく時間をおいて読み直す時にまた新しい感想を抱けそうで、それを楽しみにしています。
童の神
京の都で鬼や土蜘蛛、犬神と呼ばれて迫害される異能の者たちが、仲間の誇りと生き様をかけて戦う長編。酒呑童子や安倍晴明など伝説の人物が登場し、迫害される側の苦しみと誇りを壮大な叙事詩として描きます。戦いの描写は熱く、死の瞬間にも読者に余韻を残す筆致が今村作品らしい魅力です。
こんな人におすすめ
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伝説や妖怪を題材にした歴史ファンタジーが好きな人
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差別される者たちの誇りと戦いに共感したい人
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重厚な叙事詩を読みつつ、人間の温かさも感じたい人
「世を、人の心を変えるのだ」「人をあきらめない。それが我々の戦いだ」
――平安時代「童」と呼ばれる者たちがいた。彼らは鬼、土蜘蛛……などの恐ろしげな名で呼ばれ、京人から蔑まれていた。
一方、安倍晴明が空前絶後の凶事と断じた日食の最中に、越後で生まれた桜暁丸は、父と故郷を奪った京人に復讐を誓っていた。
そして遂に桜暁丸は、童たちと共に朝廷軍に決死の戦いを挑むが――。
差別なき世を熱望し、散っていった者たちへの、祈りの詩。
・半村良、隆慶一郎亡き後、これはという伝奇小説に出会うことなく寂しい思いをしていたが、久々に面白い作品が登場した。時は平安、酒呑童子伝説に想を得、「まつろわぬ」者の視点で描いた物語である。不吉と言われる皆既日食の日に生まれた桜暁丸(おうぎまる)が酒呑童子と呼ばれるまでの数奇な運命が読む者を引き付ける。
てらこや青義堂 師匠、走る
明和七年(1770年)の江戸が舞台。かつて“伊賀組始まって以来の鬼才”と呼ばれた忍者・坂入十蔵は、戦国の終わった泰平の世で寺子屋「青義堂」を開きます。ほかの寺子屋で手に負えない子どもたちを受け入れ、どんな子でも見捨てないと誓った十蔵は、忍術と身体能力で子どもたちのトラブルを陰から解決します。本作は子どもたちの成長と師匠の過去が交錯する感動作で、忍者の生き残りが教育者として奮闘する新鮮な設定が魅力です。
こんな人におすすめ
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師弟愛や子どもの成長物語に胸が熱くなる人
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忍者や寺子屋など江戸文化に興味がある人
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泣けるエンタメ小説を読みたい人
明和七年、太平の世となって久しい江戸・日本橋で寺子屋の師匠をつとめる坂入十蔵は、かつては凄腕と怖れられた公儀の隠密だった。
学問は苦手ながら剣術に秀でた才を持つ下級武士の息子・鉄之助、浪費癖のある呉服問屋の息子・吉太郎、極度のあがり症ながら手先の器用な大工の息子・源也など、さまざまな個性の筆子たちに寄りそう日々を送っていたが、藩の派閥争いに巻き込まれた筆子の一人、加賀藩士の娘・千織を助ける際、元忍びという自身の素性を明かすことになる。
年が明け、筆子たちのお伊勢参りに同道する十蔵の元に、将軍暗殺を企図する忍びの一団「宵闇」が公儀隠密をも狙っているという報せが届く。十蔵は、離縁していた妻・睦月の身にも危険が及ぶことを知って妻の里へ向かった。
・テンポが良く一気に、読んでしまった。 最後は、心に沁みました。
幸村を討て
衝撃的なタイトルですが、単なる討伐の物語ではなく、多くの登場人物の視点から伝説の武将・真田幸村(真田信繁)像を浮かび上がらせる作品です。徳川家康や後藤又兵衛らの語りを通じて、英雄の光と影を描き、戦の臨場感や戦略的な駆け引きも緊張感を持って展開します。読む人によって幸村への印象が変わる奥行きのある構成です。
こんな人におすすめ
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真田幸村を多面的に知りたい戦国ファン
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群像劇のように複数の視点で語られる歴史小説が好きな人
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戦略や合戦の駆け引きを楽しみたい人
徳川・豊臣両家や諸将の思惑が交錯する大坂の陣。
亡き昌幸とその次男幸村――何年にもわたる真田父子の企みを読めず、翻弄される東西両軍。
徳川家康、織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永、ついには昌幸の長男信之までもが、口々に叫ぶ。「幸村を討て!」と……。
戦国最後の戦いを通じて描く、親子、兄弟、そして「家」をめぐる、切なくも手に汗握る物語。
・本作「幸村を討て」は、「八本目の槍」の静かな緊迫感と「塞王の楯」で見られた重厚な人の思い、しかも「個」ではなく「家」という思いを絶妙なバランスで調和させた、文句なしの新たな今村翔吾作品だった。
じんかん
“裏切り者”のイメージで語られる戦国武将・松永久秀を主人公に据え、彼の壮絶な半生を織田信長が語り手となって振り返る物語です。久秀が低い身分から頭角を現し、理想に燃える三好元長の夢に共鳴する姿を通じて、「人は何のために生まれるのか」という普遍的な問いに迫ります。悪名高き人物を再解釈することで、歴史の裏側に潜む人間ドラマを掘り起こした一冊です。
こんな人におすすめ
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悪名高い人物を新しい視点で読み解きたい人
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人生の目的や夢といった哲学的なテーマに惹かれる人
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信長や戦国時代の裏面史に興味がある人
主家を乗っ取り、将軍を暗殺し、東大寺大仏殿を焼き払う。
悪名高き武将・松永久秀は、織田信長に二度目の謀叛を起こしていた。
だが信長は、「降伏すれば赦す」と言う。
驚愕する小姓・狩野又九郎を相手に信長は、
世人は知らぬ久秀の壮絶な半生を語り始める――。
魂を震わす歴史巨編!
・めちゃくちゃ面白かった。一気読みだった。 戦国時代の三悪人と言われる松永久秀の生涯を描いたものだが、あっという間に引き込まれて最後まで読んでしまった。自分たちが「悪人」「善人」っていってるのはなんなんだろうね。何を見て言っているのだろう。 神仏を信じない九兵衛。誰も救ってくれないじゃないかと叫びながら進んでいく。 あらすじは書けない。心を揺さぶられたい人、とにかく一読の価値あり!
イクサガミ
西南戦争直後、292人の剣客が京都から東京へと東海道を進みながら札を奪い合う“時代劇版バトルロワイアル”。刀や拳、毒ガスから忍術まで多彩な武器と能力を持つ剣士たちが次々と登場し、前代未聞の戦いを繰り広げます。Netflixで実写ドラマ化が決定し、シリーズのエンタメ力が話題沸騰中です。
こんな人におすすめ
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手に汗握るバトルロイヤル形式の物語が好きな人
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多数の個性豊かな剣士が登場するアクションを楽しみたい人
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映像化作品の原作を先に読んでおきたい人
斬れ。生き残れ。
デスゲーム×明治時代――大興奮の侍バトルロワイヤル開幕!
・Kindle unlimitedで1巻を読了後、すぐ2巻を購入。読了後は3巻、最終巻を一気に買って、夜までやめられず、1日で全て読了してしまった。 ページをめくる(スワイプする)指が止められない、おもしろさ、疾走感。闇あり、光あり、たいへんな流血もありだが、全体として根底に爽やかな明るさ、健全な魂が感じられ、エンターテイメントとして気持ちよく読める。久々の素晴らしい読書体験だった。出会えて嬉しい!
茜唄
『平家物語』を題材に、源平の戦いを敗者である平家の側から紡ぎ直した歴史巨編。平清盛の四男・知盛の視点で、一ノ谷・屋島・壇ノ浦の戦いを含む平家滅亡までを描きます。作中では平知盛と平教経の活躍を軸に、源氏の名だたる武将たちが立ちはだかり、『平家物語』の一節を織り込みながら敗者の矜持と美学を浮かび上がらせています。
こんな人におすすめ
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源平合戦を新しい視点で読みたい人
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『平家物語』に興味があるが、敷居の高い古典は苦手な人
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敗者の矜持を感じさせる物語に惹かれる人
祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり。朗々とした唄、琵琶の音が闇夜に響く。
何者かが男に伝える、二十余年の歳月を要して編み上げた物語。
その名は――。
平氏棟梁・平清盛が四男・知盛。清盛最愛の息子とまで呼ばれた彼だが、幼い頃から病弱で出世は遅かった。
だがそんな彼にも源氏という時代の荒波は容赦なく襲い掛かる。
弟分で「王城一の強弓精兵」と呼ばれた教経と共に否応なく前線に立つ知盛。没落に向かう平氏を盛り返すことはできるのか。
直木賞作家による、熱き血潮が巡る
・一気に読んで楽しみました。 しかし、楽しんだ、を越えて、驚いた、と言いたいです。 作者不詳の平家物語の作者を想像し、 史実との辻褄を合わせながら、 夢とロマンを見せて下さっていると思います。 素晴らしいと思います。 歴史への見方が広がります。
火喰鳥 羽州ぼろ鳶組
江戸で“火喰鳥”と名を馳せた武家火消・松永源吾は、ある火事を機に職を失い浪人となります。しかし羽州新庄藩の要請で火消し組織を再建することになり、寄せ集めの面々とともに「ぼろ鳶組」を結成。彼らは市井の軽業師や元力士など一癖も二癖もある仲間をまとめ、謎の連続放火事件や大火と対峙します。再起と再生の物語が書店員からも熱く支持されています。
こんな人におすすめ
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江戸の庶民と火消しの世界を舞台にした熱い群像劇が読みたい人
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再起するヒーローたちの物語に心を動かされたい人
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シリーズ物で長く楽しめる作品を探している人
かつて、江戸随一と呼ばれた武家火消がいた。
その名は、松永源吾。別名、「火喰鳥」――。
しかし、五年前の火事が原因で、今は妻の深雪と貧乏浪人暮らし。
そんな彼の元に出羽新庄藩から突然仕官の誘いが。
壊滅した藩の火消組織を再建してほしいという。
「ぼろ鳶」と揶揄される火消たちを率い、源吾は昔の輝きを取り戻すことができるのか。興奮必至、迫力の時代小説。
・ラジオで面白いと言っていたので、初め紙の本を購入したものの、時代小説ということで、何となく読まずに置いてありました。でも読んでみたら、1巻より2巻、2巻より3巻と、どんどん面白くなります。kindleでも購入しました。文章もとても読みやすかったです。まずはこの巻を読まないと始まらないので、読んで興奮を味わって欲しいです。
くらまし屋稼業
江戸で“この世から消えたい”人々を神隠しのごとく晦(くら)ませる裏稼業「くらまし屋」を描くシリーズ。元武士の平九郎が率いるプロ集団は、依頼人が決められた七箇条を守り、報酬を払えばどんな身分でも姿をくらませます。作者は表の火消しを描いたぼろ鳶組の裏側にある世界を描き、人間の哀しさやプロの仕事への矜持を込めました。周到な計画と伏線の多さ、能力主義の組織描写が魅力です。
こんな人におすすめ
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裏稼業やアウトロー集団の活躍にワクワクしたい人
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フィクションにおける“神隠し”や潜伏手段の巧妙さを楽しみたい人
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シリーズを通して伏線が張り巡らされる作品が好きな人
万次と喜八は、浅草界隈を牛耳っている香具師・丑蔵の子分。
親分の信頼も篤いふたりが、理由あって、やくざ稼業から足抜けをすべく、
集金した銭を持って江戸から逃げることに。
だが、丑蔵が放った刺客たちに追い詰められ、ふたりは高輪の大親分・禄兵衛の元に決死の思いで逃げ込んだ。
禄兵衛は、銭さえ払えば必ず逃がしてくれる男を紹介すると言うが──
涙あり、笑いあり、手に汗を握るシーンあり、大きく深い感動ありの
ノンストップエンターテインメント時代小説、ここに開幕!
・今村さんの祥伝社のシリーズも面白いですが、それにも増す面白さです! 登場キャラクターの心情が、とても良く書き込まれていて、その生き生きとした様子に著者の筆力をしっかりと感じられました。 時代小説では欠かせないめっぽう強い主人公と、魅力的な脇役たちも個性派揃いで、目を惹きます。 そしてなによりタイトルにもある「くらまし」=困った人々を逃がす方法も、奇想天外で驚きました。1巻目を買ったのも遅かったのですが、もうすでに2巻も出ているということで、早速買って読みます。今後が楽しみなシリーズです。
蹴れ、彦五郎
今川氏真を主人公にした表題作をはじめ、平安〜戦国期の知られざる人物を描く八つの短編から成る作品集。桶狭間で父・義元を失った氏真は駿河今川家の当主となりますが、徳川家康の離反や武田氏からの圧迫で転落の一途をたどります。それでも近江の寺で出会った子供たちの師となり、蹴鞠と和歌を愛する氏真が最後に見せた心意気が感動的です。他にも北条氏規や武田義信などの知られざる半生を掘り起こしています。
こんな人におすすめ
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メジャーではない歴史人物の人生に興味がある人
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短編でさまざまな時代を旅したい人
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和歌や蹴鞠など当時の文化が出てくる話が好きな人
父義元を討たれ、今川彦五郎氏真は家督を継ぐ。しかし、隣国に圧迫され没落の一途を辿ってしまう。
そんな暗愚と評される氏真を、妻の由稀だけは信じていた。苦難の中、氏真と由稀は近江で童たちの師となり、未来に明るい光を見る。だが、童らに悲劇が――。
蹴鞠と和歌を愛す氏真が、天下人信長に示した心意地とは(「蹴れ、彦五郎」)。
誰もが持つ、輝く才を描いた八編。
・どちらかといえば、勝者でなく敗者をテーマにした作品がほとんど。そのため、地味なイメージがあるが、実際に読んでみると全くそんなことはない。また既存の歴史小説であまり主人公として扱われていなかった人にスポットライトをあてているので、新鮮な気持ちで読める。
海を破る者
2024年刊行の長編で、モンゴル帝国(元)による侵略を世界的な事件として捉え直した作品。名門河野家が内紛で没落するなか、当主・河野通有は惣領の座をめぐる伯父との争いを抱えつつ、迫る元軍に対抗するため一族を束ね九州へ向かいます 。デビュー前に書かれた短編を基にした物語で、侵略者と戦うだけでなく家族や異文化との出会いも描かれています 。
こんな人におすすめ
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元寇を舞台にしたスケールの大きい歴史小説を読みたい人
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家族や一族の内紛が絡む戦記物が好きな人
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世界史の出来事を日本側の視点で味わいたい人
なぜ、人と人は争わねばならないのか?
日本史上最大の危機である元寇に、没落御家人が御家復興のために立つ。
かつては源頼朝から「源、北条に次ぐ」と言われた伊予の名門・河野家。しかし、一族の内紛により、いまは見る影もなく没落していた。
現在の当主・河野通有も一族の惣領の地位を巡り、伯父と争うことを余儀なくされていた。
しかしそんな折、海の向こうから元が侵攻してくるという知らせがもたらされる。いまは一族で骨肉の争いに明け暮れている場合ではない。通有は、ばらばらになった河野家をまとめあげ、元を迎え撃つべく九州に向かうが……アジア大陸最強の帝国の侵略を退けた立役者・河野通有が対峙する一族相克の葛藤と活躍を描く歴史大河小説。
・ちょっとどころかかなりレアな海戦で、しかも元寇もの 今いちばん絶好の作家さんでかなり読ませます。 紙本で読んで保存用にKindleも購入してしまいました
五葉のまつり
豊臣秀吉の天下統一後を舞台に、北野大茶会・刀狩り・太閤検地・大瓜畑遊び・醍醐の花見といった巨大イベントを裏方で支えた“五奉行”の奮闘を描きます。秀吉に抜擢された浅野長政・前田玄以・石田三成・増田長盛・長束正家の五人がぶつかりながらも力を合わせ、尊敬と嫉妬の中で難事に挑む“歴史お仕事小説” 。『八本目の槍』に続く石田三成シリーズ的作品として注目されています。
こんな人におすすめ
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歴史の表舞台を支えた官僚や職人の働きぶりに興味がある人
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豊臣政権下の政策やイベントの裏側を覗きたい人
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石田三成を中心とした群像劇が好きな人
戦だけが闘いの場じゃない。命と矜持を賭けた任務への挑戦が今、始まる。
刀狩り、太閤検地、醍醐の花見など、豊臣秀吉が仕掛けた大事業を縁の下で支えたのは、尊敬と嫉妬のまなざしを浴びながら五奉行と呼ばれるようになった男たち。
ぶつかることも多いが互いの才は認め、敵対勢力の横槍をはねのけ、力を合わせて難事に立ち向かう。
『八本目の槍』に次ぐ、石田三成をめぐる歴史お仕事傑作巨篇!
・今回の作品も楽しめました。外れることがまずないので、安心して購入できる作家さんの1人。 シリーズ物の続編もまだか、まだかと期待してます。
人よ、花よ、
南北朝時代の武将・楠木正行(多聞丸)を主人公に、父・楠木正成の遺志を抱きながらも自身の願いと忠義の間で揺れ動く姿を描いた最新長編。南朝方の楠木一族は北朝から逆賊とされ、戦国期には軍神として祭り上げられましたが、敗戦後には軍国主義の象徴として否定されるなど評価が二転三転した歴史に作者は着目しました 。正行の目を通して父や南北朝を描くことで、多様な解釈を読者に委ねる作品です 。
こんな人におすすめ
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楠木正成や南北朝時代に興味がある人
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歴史人物の評価が時代によって変化する様子を考えたい人
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読後に様々な解釈ができる余韻のある小説を読みたい人
軍神と崇(あが)められる楠木正成を父に持つ正行は、戦なき世を求めて、北朝に降(くだ)る決意を固める。
それは、楠木家こそ挽回の鍵だと頼みにしている南朝を滅亡に向かわせることに他ならないのだが……。
・小楠公として忠君報国の鑑のように言われている楠木正行の本当の心は....北朝と融和して民衆の平和な生活を守ることを目指した彼の生き方に感動しました。NHKの大河ドラマになってほしい。
ひゃっか!
高校二年生の大塚春乃は、即興で花を生ける「全国高校生花いけバトル」に魅了され、出場を目指します。生け花は高校生には敷居が高くペアも見つからない中で、転校生で大衆演劇の役者・山城貴音とコンビを組み、大会に挑戦する青春小説です 。華道と演劇という異なる芸に取り組む二人が互いを支え成長していく姿が爽やかで、直木賞作家が贈る熱い青春物語として人気です。
こんな人におすすめ
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部活や大会に打ち込む高校生の青春小説が好きな人
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華道や舞台芸術など日本文化をテーマにした作品に興味がある人
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直木賞作家の現代物に触れてみたい人
「全国高校生花いけバトル」。即興で花をいける、5分の勝負。
二人一組でエントリー。花をいける所作も審査対象。──高校二年生の大塚春乃はこの大会に惹かれ、出場を目指していた。
だが生け花は高校生にとって敷居が高く、パートナーが見つからない。
そんな春乃の前に現れた転校生・山城貴音。大衆演劇の役者だという彼は、生け花の素養もあると聞き……。
高校生たちの花にかける純粋な思いが煌めく、極上の青春小説。
・くらまし屋やらぼろ鳶シリーズを始め、時代小説として塞翁の盾など幾多の名作を描き続けてきたが…、全く遜色なく楽しめた。登場人物の全てが魅力的で、本当にあっという間に読めました。この先、勿論、時代モノも読みたいけれど、たまにこういった現代小説良いな。逆に、これを読んだ若い世代が過去作の時代小説に流れたら最高。今後の作品にも超期待してます。
よくある質問(FAQ)
Q. 今村翔吾作品、どれから読めばいいですか?
A. この記事のテーマ的には、やっぱり
①『イクサガミ』→②『塞王の楯』→③『八本目の槍』or『五葉のまつり』
このルートがおすすめです。
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『イクサガミ』で“エンタメ全開のバトルロワイヤル”を味わい、
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『塞王の楯』で職人と武将の“エモい信念のぶつかり合い”を浴び、
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そこから豊臣政権期を描く『八本目の槍』『五葉のまつり』へ、歴史お仕事小説の沼へダイブ…という流れです。
Q. 歴史が苦手でも楽しめますか?
A. むしろ「歴史ちょっと苦手なんだけど…」という人にこそ読んでほしい作家です。
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実在の戦や事件は出てきますが、どの作品も「人物のドラマ」が主役。
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地名や年号が分からなくても、感情の流れでぐいぐい読めます。
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作中の出来事は、実際の史実や時代背景にベースがありますが、あくまで“物語としての面白さ”が優先されているので、教科書感はゼロです。
Q. イクサガミって、どの順番で読めばいいの?
A. 基本は「天 → 地 → 人 → 神」の4部作です。
外伝『無』まで含めると5冊構成ですが、本編としては上記4冊で完結します。
まずは『イクサガミ 天』で世界観とデスゲームのルールに慣れ、
続巻でどんどんキャラの過去や因縁が明かされていく構成になっています。
Q. ボリューム的にきつくないですか? 長編は読み切れるか不安です。
A. たしかに『塞王の楯』など、500ページ超え級の長編もあります。
ただし、
-
1章ごとのメリハリがはっきりしていて“区切って読む”のに向いている
-
会話もテンポがよく、ページ数のわりにサクサク進む
-
1冊読み終えたときの「読み切った〜!」という達成感がかなり大きい
ので、「厚い本デビュー」にちょうどいい作家でもあります。
Q. Kindle・Audible・紙の本、どれが読みやすいですか?
A. 好みですが、ざっくりこんなイメージです。
-
紙の本
→ イクサガミの帯やカバーデザイン、塞王の楯の分厚さなど“本そのもの”を愛でたい人向け。
-
Kindle本
→ ベッドで寝転びながら読みたい人、文字サイズを変えたい人、積読を増やしたくない人に。
-
Audible(音声)
→ 通勤・家事中に“耳だけ読書”したい人向け。戦いや会話シーンの臨場感が増すタイプの作品が多いので相性◎です。
※Kindle本はアプリから直接買えないことがあるので、本文で書いてくださっているように「ブラウザで開いて購入」が安心ですね。
Q. グロい描写や重すぎるテーマは大丈夫?
A. デスゲームや戦場が舞台の作品も多いので、
流血や死から完全に無縁、とは言えません。
ただ、
-
無意味に残酷さだけを盛るタイプではなく、
-
「何のために戦うのか」「どう生きて、どう散るのか」
といったテーマとセットで描かれているので、読後感はむしろ“静かな熱さ”が残るタイプです。
重さだけでなく、ユーモアや優しさも必ず混ぜ込まれているので、そこも今村作品の魅力のひとつです。
まとめ
『イクサガミ』で血湧き肉躍るバトルロワイヤルを走り抜けたあと、
その勢いのままページを閉じるのは、あまりにもったいない。
-
職人たちの誇りと技がぶつかる『塞王の楯』
-
“敗者側”から歴史を塗り替える『八本目の槍』『茜唄』
-
江戸の火消しや裏稼業を描く、熱い人情シリーズ『羽州ぼろ鳶組』『くらまし屋稼業』
-
そして高校生たちの花いけバトルを描く現代青春小説『ひゃっか!』まで。
ひとりの作家なのに、
戦国、平安、江戸、明治、現代――と、
時代もジャンルもテンションも、ここまで振れ幅が大きい人はそう多くありません。
この記事で挙げた15作品は、
-
「まずは間違いない名作」
-
「いま話題・最新の一冊」
-
「ちょっと違う一面が覗ける変化球」
をバランスよく混ぜた、“今村翔吾ワールド入門〜中毒コース”です。
どれか1冊でも、
「これ、今の自分の気分に刺さりそうだな」と感じたら、
その直感を信じて、ぜひページを開いてみてください。
次の一冊が、また別の作品への扉になって、
気づけば本棚の一角が今村翔吾コーナーになっている――。
そんな幸せな沼落ちを、こっそり願っています。
※セール・商品情報などは変更になる場合がありますので必ずご確認の上ご利用ください。
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最後までお読みいただきありがとうございます。
良い本と、良い出会いを。















